A.敵とスキな奴。


今日俺は、学校を休んだ。
風邪だからってのはあるけど、こんな風邪で学校を休むなんて、ありえねぇ。

というのも、俺が起きたら母さんが止めたんだけどな。
だから朝から今まで、ずっと寝てる。
長時間同じ場所で寝ころんで、一番思うのは、暇だってこと。
ちょこちょこ時計を見て、携帯をいじって.....そのエンドレス。

12時過ぎ、携帯が急に鳴り出した。
見てみると、大ちゃんとくすけんから見舞いのメールが来てた。
俺がこうしてる間にも、大ちゃんはくすけんと一緒にたくさんしゃべってんだろうな。

やべ、考えてたら熱くなってきた。
それはあいつのことを考えたせいなのか、風邪のせいなのか、よくわからなかった。
思い立って、近くにあった体温計を手にして脇に挟む。
計ってる途中、額に手を当てると思った以上の暑さに驚いた。

ピピピピッ

取り出した体温計には、38.6と表示されていた。
........は!?
38.6!?
今朝計ったときより、体温があがっていた。
インフルか?俺。
や、でもそこまできつくねぇし。

.

.

ピーンポーン.....


あ....れ.....
俺はかすかに聞こえたインターホンの音に目が覚めた。
つか今何時....

手探りで見つけた携帯を付けて見てみると、もうとっくに6時過ぎていた。
うおっ、俺どんだけ寝てたんだ。
こんな時間だし、もうとっくに学校は終わってる頃だな。

....あ゛ー、くそっ!
なんか急にむしゃくしゃしてきた。
はあー.....くすけんに会いたかったわ。
なんて言ったって、どうにもならねぇけど。

あ、そういや誰か来たっぽくなかったか?
俺は重い腰を持ち上げて、玄関に向かって歩き出した。
家中静かだと思ったら、誰もいねぇじゃん。
全く、風邪の子供を置いて仕事行くか?普通。
んなことしてる暇あったら、看病しろっての!

とか思いながら玄関の前まで行くと、急に目眩が襲ってきた。
っ........ちょ、熱あがってんじゃねぇか!?
俺は近くの壁に寄りかかって、一回深呼吸した。

宅配とかだったら、早く帰そう。
そう考えながら、俺はドアノブに左手をかけて壁に右手を置いて、ベストなポジションで扉を開けた。

----ガチャッ

「あ.........っ」

え...?
突然目の前に現れた人物を見て、俺は思わず声を漏らした。
なんで...くすけんが?
思ってもみなかった人の登場に、すっと腰が抜けてしまった。
そのまま目の前にいる奴に倒れ込む。

「亮ちゃんっ!大丈夫?」

心配そうな顔で慌てながらも、俺を支えるくすけん。

「わり....大丈夫」

笑いながら答えると、くすけんは『大丈夫じゃないじゃん!』って、声を張り上げて言った。

そのまま、腰の抜けた情けねぇ俺をくすけんは一生懸命運んでくれた。

--------バタンッ

「亮ちゃん、立てそう?」

玄関の扉が閉まると同時に、焦りながらくすけんは俺に問いかける。

「立てそう、つか.....なんか、ボーッとする.....」

俺は、両手で俺を支えてくれてるくすけんの背中に腕を回した。
そのまま、もたれかかるように全体重をくすけんにかける。

「り、亮ちゃんっ!」
「ん、何」
「すごく熱いよ、ほんとに大丈夫?」

相変わらず、焦りながら心配するくすけん。

あー...やべ、動きたくねぇ...
つか、くすけん抱きしめてたらすげぇ落ち着く。
このまま寝そうだわ、俺。
風邪でおかしくなったのか、いつもよりくすけんの行動が、声が、表情が、愛しく見えて.....

「亮ちゃん、熱い、よ...」

ついに耐えきれなくなったのか、くすけんは言葉を途切れ途切れにさせて言う。

「俺が風邪だからだろ、移ったかもな」

そう言いながら、俺は抱きしめるのをやめてくすけんの顔色を伺った。
りんごみたいな真っ赤な顔が、俺を前にして俯いていた。

「移ってないよっ、急に押し掛けてごめんな?」

俯いてたと思ってた顔が、急に起きあがってきて申し訳なさそうな表情に変わった。

「んなことないって、すげぇ嬉しい.....ありがと」

ふらふらして足場が定まらない中、俺は本音を零して微笑んだ。

「ははっ、亮ちゃんがお礼言った!」

よっぽど珍しかったみたいで、くすけんは、ぱっと笑顔を俺に見せた。

「んだよ、文句あんのかー」
「ひゃ、ないないっ、ないって!」

笑ってるくすけんの脇腹をつつくと、一瞬反応してすぐ否定した後、俺に仕返ししてきた。
いちいちくすけんの反応が可愛すぎて見えて、どんどん火照ってく身体に、遠退いて行く意識。
俺は完璧に風邪の域を越えてしまったことを自覚する。

「........っ、亮ちゃ....」

目の前が霞む中、最後に見たくすけんの表情。
なん、だよ.....んな焦った顔...するなっ、て........----

.

.

「ん.....」

次に目が覚めたとき、俺はソファに横になっていた。
自分で横になったのか、誰かに寝かされたのか、よくわからなかったけど.......

起きあがると額から水浸しのタオルが落ちてきた。
このタオルって.........
よく見たら、俺のじゃない。
ってことは...くすけんの?

立ち上がると、もう熱もないみたいで全然身体は重くなかった。
くすけんが見舞いに来てくれたおかげ、かもな。
俺はタオルを膝の上に置いて、携帯のメール作成画面を開いた。



Today...2013/1/23....End

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